結論:香水の再構成には GC-MS が使われます。香水を個々の分子に分離し、その大半を化学的な指紋によって特定する分析手法です。これで長く詳細なリストが得られます。しかし、処方そのものが得られるわけではありません。天然精油は何十もの別々の分子として現れ、独自開発の原料は特定できないことがあり、重い原料は隠れてしまうことがあり、配合量はおおよその値にすぎません。その隙間を埋めるのが調香師の鼻です。だからこそ、どの再構成も一つの解釈であり、完全なものは一つもないのです。
ステップ1:分離する(ガスクロマトグラフィー)
ごく少量の香水を気化させ、不活性ガスで非常に長く非常に細いカラムの中を押し流します。カラムはオーブンの中に巻かれていて、長さが数十メートルになることもよくあります。各分子は、揮発性の高さや、カラム内側のコーティングへのくっつきやすさに応じて、それぞれの速さでカラムを通り抜けます。軽く揮発しやすい分子が最初に、重い分子が最後に出てきます。
カラムの出口から得られるのがクロマトグラムです。成分ごとにピークを持つ線が、時間軸に沿って広がっています。複雑な香水なら何百ものピークが現れます。
ステップ2:特定する(質量分析)
各成分はカラムを出るとそのまま質量分析計に入り、そこで電荷を帯びた断片に分解され、その質量が測定されます。分子はそれぞれ固有のパターンで砕けます。そのパターン、つまりマススペクトルを、何十万もの既知化合物を収めた参照ライブラリと照合し、最もよく一致したものがそのピークの名前になります。
この2つを組み合わせれば、ほとんどのピークについて、それが何の分子で、おおよそどれくらいの量があるのかがわかります。
それだけでは足りなくなるところ
ここが、誠実な再構成とマーケティング上の主張を分ける部分です。GC-MS は驚くほど優れた手法ですが、特定の死角があります。
天然精油はバラバラになって現れる
天然原料は一つの分子ではありません。ベルガモットオイル、ローズアブソリュート、パチョリは、何十、何百もの化合物の混合物です。クロマトグラムには「ベルガモットオイル」とは表示されません。表示されるのはリモネン、酢酸リナリル、リナロールなど多くの分子で、しかもほかの原料に由来する同じ分子と混ざっています。どのピークがある天然精油に属するのか、そしてその精油がどのグレードなのかを判断するのは、解釈の仕事です。
独自開発の分子は一致しないことがある
香料メーカーは、一定期間自社だけが使用を許されるキャプティブ分子を開発しています。その中には公開されている参照ライブラリにまったく載っていないものもあるため、ピークがはっきり存在していても名前がつかないことがあります。再構成では、それを同じような役割を果たす入手可能な原料に置き換える必要があります。
重い原料は隠れることがある
一部のレジノイドや重いムスクのような、非常に大きい、あるいは揮発しない原料は、カラムをうまく通過しないか、まったく通過しません。肌の上での香りに重要な役割を果たしていても、結果の中では実際より少なく表れることがあります。
配合量は推定値である
ピークの大きさは量と関係していますが、分子によって検出器の反応が異なるため、ピークの大きさは重量と同じではありません。正確な量を得るには原料ごとに既知の標準物質で校正する必要がありますが、すべての成分についてそれが行われることはまれです。さらに、よく似た分子同士でよく起こるピークの重なりが、全体像をいっそうぼやけさせます。
ごく微量が非常に大きな意味を持つことがある
調香で最も強力な原料の中には、100分の数パーセントで働くものがあり、クロマトグラム上ではっきり見えるレベルをはるかに下回る量でも鼻で感じ取れるものがあります。最も小さなピークが、香水全体の個性を担っていることもあるのです。
それでも最後に決めるのは鼻
こうした限界があるため、分析から得られるのは答えではなく下書きです。その下書きを実際に調合し、ムエットと肌の上でオリジナルと並べて嗅ぎ、調整し、また調合します。GC-MS で名前がつかなかった原料は、同じような役割を果たす原料に置き換えます。装置では推定しかできなかった配合量は、香りで修正します。何度も繰り返すのが普通です。
だからこそ、同じ香水を別々の2人が再構成しても結果が同一になることはなく、どちらもオリジナルと同一にはなりません。近づけることはできます。完全に同じにすることはできません。「100%同一」を約束する人は、化学では実現できないことを約束しているのです。これは裁判所が引いた線でもあります。類似香水をオリジナルと比較することは認められていますが、同じでないのに同じだと主張することは差し止められてきました。詳しくは香水のデュープは合法かの記事で解説しています。
このサイトの処方にとっての意味
ここから3つのことが言えます。そしてそれぞれ、ご自身で確かめることができます。
- 処方は再構成であり、私たちはそう明言しています。ここにある処方は、ある香りがどのように組み立てられているかの解釈であり、秘密の文書のコピーではありません。
- 実際に購入できる原料を使っています。オリジナルがキャプティブ分子に頼っている場合、処方では同じ役割を果たす入手可能な原料を使います。手に入らない原料のリストを渡すことはありません。
- 処方は改善され、その改善は購入者にも届きます。処方を改良すると、その処方を持っている全員のページに更新版が表示され、追加料金はかかりません。
こうした再構成から何百もの香水を通して見えてくるパターン、つまりどの原料がどれくらいの配合量で最も多く登場するかは、803処方の分析にまとめています。
よくある質問
デュープのメーカーは、どうやって香水の中身を知るのですか?
通常は GC-MS 分析を使います。香水を分子に分離し、その大半を参照ライブラリと照合して特定します。そのうえで、分析では解決できなかった部分を修正するため、オリジナルと比べながら調合と試香を何度も繰り返します。
GC-MS とは何ですか?
ガスクロマトグラフィー質量分析法です。ガスクロマトグラフィーが混合物を成分に分離し、質量分析が各成分をその砕け方のパターンから特定します。香水のような揮発性の混合物を分析するための標準的な手法です。
GC-MS で香水の正確な処方がわかりますか?
わかりません。天然精油を一つの原料として直接特定することはできず、独自開発のキャプティブ分子は名前がつかないことがあり、一部の重い原料は実際より少なく表れ、量はおおよその値しか得られません。調香師が結果を解釈し、隙間を埋めます。
なぜデュープはオリジナルとまったく同じ香りにならないのですか?
分析には現実的な隙間が残り、キャプティブ分子は代替が必要で、天然原料はバッチや供給元によって異なり、配合量は推定したうえで香りによって調整しなければならないからです。優れた再構成は近づけることができますが、完全なものはありません。
キャプティブ分子とは何ですか?
香料メーカーが開発して特許を取得し、一定期間は自社だけが使用できる香り分子です。一部の香水の再現が難しい理由の一つであり、再構成では同じような役割を果たす入手可能な原料に置き換えます。
